歌とセリフ
—ストーリー展開

ミュージカルのストーリー展開というものは独特なものがあります。
映画のように順を追って場面の変化を表現したり、映像カットによる心情描写などによって状況を説明する、というようなものではなく、そのストーリーの進み具合は、セリフによって、もしくは歌によって、動きによって、それらの手法が複合的に組み合わされることによって表現されます。そして、その要素ひとつひとつにストーリー展開を伝えるための意味づけがあり、限られた時間内で、舞台の上、撮り直しのきかない一回きりの演技、という制限のある中で、いかにそのストーリーを観客に対して経験的に伝えるか、珠玉の工夫が凝らされた、人間の織り成した芸術の賜物と言えるでしょう。 主に、ミュージカルでのストーリー展開は、セリフと歌の組み合わせによって進むようになっています。 セリフや歌が各々どのような役割を果たしているのか、私個人の見解ではありますが、綴らせていただきます。
—セリフの力

映画のように繊細な映像表現やカット割りができず、小説のように言葉で全てを語ることができない、そんなミュージカルの中で、セリフというものはひときわ重要な役割を果たしています。 ひとつひとつのセリフは、発音や言葉の言い回しなど、わかりやすさが重視され、観客により深く伝わるよう、最大限の工夫がされています。例えば、「が」の発音をするときには、小さく「ん」を入れて「んが」という発音にすることによって、よりはっきりと聞こえるようになります。声色や抑揚も、同じセリフをよりわかりやすく状況説明的に伝えるためにも大事になってきます。 また、台本についてですが、私がよく鑑賞する劇団四季のミュージカルでは、その台本も日々より良いものにするために細かな修正や変更が重ねられるそうです。台本が一度出来上がれば終わりではなく、日夜、より良い公演にするために変わり続けるのです。 ほら、何度も同じ演目を見ても飽きない意味がわかってきたでしょう?笑 その他にも、私のお気に入りのミュージカルの一つ、ライオンキングでは、中盤に出てくる「ハクナマタタ」のティモンとプンバァの掛け合いの部分に、上演される地方土地の方言が使われます。東京公演では江戸弁、大阪公演では大阪弁、といった感じです。 このように、セリフの持つ力はミュージカルにおいて単なる言葉以上に意味あるもので、見逃せないポイントがたくさんあるのです。 (出典:http://gekidanshiki.com/lionking/archives/864
—歌とメッセージ

ミュージカルをミュージカルたらしめる要素として欠かせない、歌と音楽。 ミュージカルにおいては、もちろん音楽的側面のみならず、メッセージを伝えるために重要な役割を果たしています。 例えば、後ほど話に出てくる「アイーダ」ですが、主人公たちの抱える繊細な心情の移り変わりを描写するにあたっても、歌と音楽が大きく作用しています。 簡単に言えば、最初は嫌い合ってた男女が1曲が終わる頃には恋に落ちている、といった具合に、ミュージカルにおいて音楽と歌で話の展開がぐっと進むのは、珍しくないことです。というか、それが一種の醍醐味、と言えるぐらいかもしれません。「アイーダ」で劇中に2回使われる「迷いつつ」という曲では、2回目の終わりの最後の1音の変化にそのあと起こる出来事を示唆する含みが持たされています。1音の変化がこんなに話の展開を変える働きをするのか、ととても感動しました。
—歌とストーリーで魅せられる作品

個人の所見ではありますが、歌とストーリー展開が特に素晴らしいと感じる作品をご紹介します。 先ほども登場しましたが、2000年に本場ブロードウェイで初演され、トニー賞やグラミー賞で多くの部門を受賞した、「アイーダ」がそのひとつ。 日本では2003年に劇団四季によって大阪にて初演されました。 このミュージカル、私が人生で一番感動したミュージカルといっても過言のないくらい。 ストーリーは一言で言うと、切なくも美しい愛の物語、という感じでしょうか。 現代の古代エジプト美術館のシーンから始まり、歌と共に時代は遡って古代エジプトへ。エジプトの将軍ラダメスと、捕虜として捉えられたヌビアという国の王女アイーダ。初めは反発し合う2人ですが、徐々に心を開き、やがて恋に落ちます。しかし、ラダメスにはアムネリスという婚約者が。そしてまたアムネリスは友人として、アイーダを慕うことになります。国家間の板挟み、三角関係の板挟みになり苦しむアイーダ。そしてアムネリスもまた、エジプトの女王として、ある重大な決断を下す時がやってきます。アイーダとラダメス、二人の運命は一体どうなるのか? このミュージカルにおいて、エルトン・ジョンとティム・ライスのタッグによって生み出された美しい音色は、物語の舞台エジプトのエキゾチックな雰囲気と見事にマッチして、微妙で繊細なそれぞれの登場人物の心情表現をより引き立たせています。 私が見たときは、アイーダ役に濱田めぐみさん(現在はすでに退団されています)、ラダメス役に阿久津陽一郎さん、アムネリス役に佐渡寧子さん(すでに退団されています)という、当時切ってのゴールデンキャスト。日本でのこけら落としの初演キャストです。 何と言っても、濱田さんの圧巻の歌声。歌を聞いただけで涙が出そうなくらいの迫力。あんなに心に直に響く歌声は、なかなか聞いたことがありません。透き通るような、そして情熱的で力強い、まさに強くたくましいアイーダという女性を演じるにぴったりな俳優さんです。今はもう劇団四季には在籍されていないのですが、別のミュージカルに出ておられるそうです。

ミュージカル「メンフィス」再演情報
http://artconsultant.yokohama/jp-memphis-musical2017/
山本耕史さんと共演されているみたいです。なんだかもう、すっかり有名人という感じですね〜!
https://twitter.com/megumihamada?lang=ja
ツイッターもされているようです。

ちなみに、私はどっぷりアイーダにハマっていた頃、濱田さんの声をCDで聴くだけで涙が止まりませんでした。笑 どっぷりアイーダにハマっていた頃、私はCDを聴くだけで涙が止まりませんでした。笑 (出典:http://movie-sakura.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_afb1.html
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